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2025/06/26 10:21 |
映画「かぐや姫の物語」
映画「かぐや姫の物語」を見てきました。
CMでアートワークが筆画っぽくて素敵だな~と思っていたので期待して見に行きました。
映像はまあ美しかったです。けれどそれだけを目当てに行くほどでもないと思いました。


以下ネタバレ感想です。
結構辛口なので、嫌な人はスルーしてください。



子供の頃母に読んでもらった絵本の「かぐや姫」大好きでした。
高校時代には古典の授業で「竹取物語」を学びました。
この映画は基本的に古典の竹取物語に沿って物語は進みます。
でもそれならそのまま忠実に作って欲しかったです。


なんとなくこの映画のかぐや姫=竹の子は「虫愛ずる姫君」のようだと感じました。
この映画が他の会社の作品だったら意識しなかったのでしょうが、すでに存在しているジブリの「虫愛ずる姫君」を思い出して比べてしまいました。残念ながら比較するのが失礼なレベルでしたが。


捨丸がこの作品に必要だったのかもよくわからないです。
竹の子が捨丸を憧憬や恋愛対象としてみていたようには思えないので、二人で空を飛ぶのは唐突でした。
それに捨丸の妻子がいながら簡単に放り投げるようなセリフ。
雨の日に殴られてからかぐや姫に再開するまでの人生の重みを全く感じられず、単なる軽薄な男にしか見えませんでした。それではあの一輪の花を差し出した貴公子と何が違うのか。

翁の人物像も残念でした。かぐや姫と意思疎通できてない様がとても滑稽で切なかった。媼と対比するといっそ哀れですらありました。
あえてそのような人物像にした理由も想像がつきませんでした。世の一般的な父と娘があんな関係性しか結べないと思っているのでしょうか。
翁、媼視点で見ると、「かぐや姫の物語」はとても悲しい話だと思いました。
天から子供を授かって、大切に育てて、それなのに遠くに行く上に自分たちのことを忘れてしまうのだから。

でも、かぐや姫視点だとどうなんでしょう?
終盤、彼女自身のセリフの通りなんですが、なんだか思春期のモラトリアムにずっと付き合わされていた気分でした。いち少女としてみた場合、それが普通なのだと思います。
でもそれは、私は「かぐや姫」で見たい物語ではない。
それこそ舞台が現代でも「かぐや姫」でない貴族のお姫さまの物語でも良かったと思います。
結局心理的な成長も何も行われないまま、月へ帰るために舞台から強制退場。
ずっと彼女の成長を見守ってきた観客としては、ただただ後味が悪い。


この映画で彼女が月で犯した罪と罰の詳細は語られません。
大まかにわかったことは、地球に憧れるのが罪とされる月で地球に憧れたため、罰として地球に落とされた。
一度目の罰は地球へ落とされたこと、二度目の罰は手に入れた喜怒哀楽を手放すことだと思いました。でも、意味がわかりません。月の世界はなんのためにそんなことを?
「竹取物語」ではかぐや姫は何らかの罪を犯したため、「きたなきところ」である地球に追放されます。その罪については語られません。だからこそこの映画では、その罪の内容も含めて描いてくれるのだと思っていました。
この映画のキャッチコピーが「姫の犯した罪と罰」なら相応の内容を用意していて欲しかった。

でも高畑監督はこのキャッチコピーに反対していたともTVで見ました。
最初は「清く、凛々しく、美しく」だったそうです。でも姫は美しくはあっても清くも凛々しくもありませんでした。

皮肉なことに姫の嫌った求婚者のうち、竜退治に行った武者と、燕の子安貝を手に入れようと亡くなった二人が一番清く凛々しかった気がします。
竜退治に行った武者は捨丸と違って北の方を離縁してから筑紫国に向かったようでしたし。
一夫多妻が当たり前の貴族社会において、そこまでの覚悟を見せるのは誠実だと思います。

田舎を美しく描く一方、都の人々は必要以上に醜く描かれていた気がします。
特に一番不快感が強かったのは帝でしょうか。帝のキャラクター造形(姿、性格)がああであるのは悪意あってのことかと疑いました。
「竹取物語」では帝はかぐや姫から与えられた不死の妙薬を、一人で生きても仕方ないと富士山で焼かせました。そこで描かれているのは切ない恋の終わりです。
けれどこの映画の帝はかぐや姫を月に帰りたいと思わせるほどの、姫にとっての「きたなきところ」の塊のようでした。

「竹取物語」は、当代きってのイケメンたちをばっさり振っていく爽快感もあってのことだと思うのに、その求婚者たちがあの描かれ方・・・。
彼女が選ぼうとした男の魅力の無さ・・・。
正直誰にも感情移入ができない。せいぜい竹取の翁・媼夫婦くらいでした。

最後の月からのお迎えの一行が奏でる音楽はディズニーのエレクトリカルパレードかと心で突っ込んでしまいました。
なぜあの曲。飛天たちの奏でる音楽が楽しげなのはいいけれど、すさまじい違和感でした。
また中央に仏様がいたことにも「え?なんで?」ってなりました。
まさか仏様が罰を下したとでも?



一体この「かぐや姫の物語」で何を描こうとしたのでしょうか。
いっそ原作通りのストーリーでショートフィルムにしてしまえば良かったのでは。
アニメーションの世界はよくわかりませんが、どこに50億かかったのでしょう。
この「かぐや姫の物語」は「竹取物語」好きは見ないほうがいいと思いました。
原作のもつ美しさがすべて損なわれている。そんな映画でした。
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2013/12/09 17:58 | Comments(0) | 映画

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